ちりぬるをわか
日々のちょっとした事。で、いろんなことがあったりなかったり。
「いちばん初めにあった海」 加納朋子著 角川書店 1996年出版
あらすじにかえて(カバー裏紹介文の写し):
ワンルームマンションで一人暮らしをしていた堀井著夏は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。だが、千波はこの人物に全く心あたりがない。しかも開封すると、そこには”あなたのことが好きです”とか”私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、<YUKI>とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まったー。
心に深い傷を追ったふたりの女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、胸いっぱいにひろがるぬくもりあふれたミステリー。
加納朋子の本を読むのはこれが2冊目。一冊目はデビュー作の「ななつのこ」で、たしか15年位前に読みました。「ななつのこ」も手紙のやり取りで謎が溶けていくという面白い日常ミステリでかなり気に入ってたのに加納朋子の次の本を手にすることが無いままきでした。日常ミステリーってけっこう好きなのですが、その一番初めに読んだのが「ななつのこ」。
今回読んだ「いちばん初めにあった海」も日常の中での出来事が描かれ、何故主人公の千波はこんなことになってるのだろうと読みながら考え、そして話が進むと少しずついろいろな謎が明らかになってくるスタイルの作品。
そもそもこの主人公がどういう人物でどうして一人暮らしをしているのかがわからないまま、住んでいるアパートの騒音に耐えられず引っ越しをしようと考えるところから始まりますのでそこからすでに謎です。
そういった主人公の現在のあとに、思い出や記憶が少しずつ描かれていくのは、まるで2本の点線を交互につないで行くような感じで、その中から読み手はこうじゃないのかって思う謎を読み解いどんどん積み重ねていく面白さがあります。
でも最後は思わぬ展開に、えっ?っと驚かされるという面白い作品でした。
他には、これが出版されたのが1996年で話の中に出てくるいろんな場面がその当時の描写だったりするのがどことなく懐かしさも感じられました。
ミステリーなのであまり書くとネタバレになるので中身はこの程度にしておきましょう。
作中の気に入った一節:「もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただの一つしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほどに確かに。
海はひとたび失われた楽園に、たぶん一番よく似ている。」
これは作中に出てくる本「いちばん初めにあった海」にかかれている文です。この本は初めはなぜここにあるのかわからないところから、最後の最後まで小説を通しての軸の一つになってる大事な鍵です。
ちなみにこの本はもう一作、「化石の樹」という短編が収録されています。こちらは主人公の男性の一人称の語りの中から謎が見えてくるというもので、過去に起こった事件に対してこういうことがあったのじゃないかと推理していくお話です。
といういことで、なんとか図書返却日前に読書ノートが書けてよかった^^;。
あらすじにかえて(カバー裏紹介文の写し):
ワンルームマンションで一人暮らしをしていた堀井著夏は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。だが、千波はこの人物に全く心あたりがない。しかも開封すると、そこには”あなたのことが好きです”とか”私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、<YUKI>とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まったー。
心に深い傷を追ったふたりの女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、胸いっぱいにひろがるぬくもりあふれたミステリー。
加納朋子の本を読むのはこれが2冊目。一冊目はデビュー作の「ななつのこ」で、たしか15年位前に読みました。「ななつのこ」も手紙のやり取りで謎が溶けていくという面白い日常ミステリでかなり気に入ってたのに加納朋子の次の本を手にすることが無いままきでした。日常ミステリーってけっこう好きなのですが、その一番初めに読んだのが「ななつのこ」。
今回読んだ「いちばん初めにあった海」も日常の中での出来事が描かれ、何故主人公の千波はこんなことになってるのだろうと読みながら考え、そして話が進むと少しずついろいろな謎が明らかになってくるスタイルの作品。
そもそもこの主人公がどういう人物でどうして一人暮らしをしているのかがわからないまま、住んでいるアパートの騒音に耐えられず引っ越しをしようと考えるところから始まりますのでそこからすでに謎です。
そういった主人公の現在のあとに、思い出や記憶が少しずつ描かれていくのは、まるで2本の点線を交互につないで行くような感じで、その中から読み手はこうじゃないのかって思う謎を読み解いどんどん積み重ねていく面白さがあります。
でも最後は思わぬ展開に、えっ?っと驚かされるという面白い作品でした。
他には、これが出版されたのが1996年で話の中に出てくるいろんな場面がその当時の描写だったりするのがどことなく懐かしさも感じられました。
ミステリーなのであまり書くとネタバレになるので中身はこの程度にしておきましょう。
作中の気に入った一節:「もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただの一つしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほどに確かに。
海はひとたび失われた楽園に、たぶん一番よく似ている。」
これは作中に出てくる本「いちばん初めにあった海」にかかれている文です。この本は初めはなぜここにあるのかわからないところから、最後の最後まで小説を通しての軸の一つになってる大事な鍵です。
ちなみにこの本はもう一作、「化石の樹」という短編が収録されています。こちらは主人公の男性の一人称の語りの中から謎が見えてくるというもので、過去に起こった事件に対してこういうことがあったのじゃないかと推理していくお話です。
といういことで、なんとか図書返却日前に読書ノートが書けてよかった^^;。
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先日散歩がてらで寄った図書館分室。なんとなく本棚を見ていたら村上春樹の「ねむり」という単行本が目に止まった。
なんとなく題名に惹かれ手にとってパラパラとめくってみて、不眠症とは違うという話から始まっているのが気になって借りてきた。
前回と同じような形式で読書感想が書けるかな?
「ねむり」 村上春樹 新潮社 2010年発行。短編だがかなりの量の挿絵で本文87ページの中に挿絵だけのページが20ほどある。
この作品はもともと「眠り」というタイトルで1989年に文芸誌に発表されたもので、その翻訳が海外で出版される際に、これらの挿絵が使われたと村上春樹があとがきに書いている。それから20年近くが経って、海外で使われた挿絵を伴い、かつ全文改稿して2010年に単行本として出版されたのだそうだ。
あらすじ:(自分で簡単にまとめたもの)
主人公は30歳の主婦、歯科医の夫、子供が一人。裕福とまでは行かないがそこそこの生活をしているが、ある日、恐ろしい夢をみて以来、まったく眠れなくなってしまう。その時以来、自分が好きだった読書にはまっていく。眠れないままで、昼間は普段どおりの生活をし、夜には自分がかつてやっていた読書をしながらお酒を飲んだり、甘いものを食べたり、車で深夜の街のドライブをしたり自分の時間が広がったと感じていた。
そんな中、少しずつ何かが違和感を覚えるようになってきて、彼女の夫や子供のことからはどんどんと乖離していく。そんな彼女の考え方もどんどんと悪い方へ向かっていく。眠れないと死んでしまうのか?死ぬってどういうこと?などを考えながらもなぜか自分がどんどんと若くなってるとも感じる。
そんな違和感の中、彼女は深夜のドライブに出かけた先で事件に巻き込まれてしまい、何かが間違っていると思いながら恐怖で動けなくなる。
というところで話は終わっている。
お気に入りの言葉とかはちょっとむずかしいので率直な感想を書く。
はっきり言って、とても後味の悪い作品だった。同時に読み手にそう思わせるだけの作者の「力」も改めて感じた。
読んでいる間、この主人公の行動を自分なりの知識と照らし合わせていた。これは実に病理的な作品だ。村上春樹がこういう作品を書くのはもしかしたら、自分の中にある闇的なものを文章としてうまく処理できる人だからなのだろう。それらの闇を心の奥底で飼いならして作品にしてるのだろうとも思うのだ。
もともとの「眠り」が書かれたのは「ノルウエィの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」の直後で心が堅まって冷たくなっていた時期だとも書かれていたので、この短編はその時の村上春樹の心の中の病理で間違い無いだろう。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドなどはわかりやすいし、短編もわかりやすい作品がいくつもあるが、この「ねむり」はそういう柔らかさに欠けてる。
随分と以前「ねじ巻きクロニクル」の第一巻を読んで気分が悪くなったときのことをかすかに思い出してしまった。この作品も狂気を描いたと村上春樹がどこかで書いていたような記憶があるが、この「ねむり」もそういう後味の悪さ。あとがきの通り心が堅まって冷たいのがそのまま出てきたような作風だった。だった。
他の人に奨めたいとは思わないが、とりあえず読了したので感想を書いておこう。
まあそんなこんなで今年2冊めの読書感想でした。
では良い一日を。
なんとなく題名に惹かれ手にとってパラパラとめくってみて、不眠症とは違うという話から始まっているのが気になって借りてきた。
前回と同じような形式で読書感想が書けるかな?
「ねむり」 村上春樹 新潮社 2010年発行。短編だがかなりの量の挿絵で本文87ページの中に挿絵だけのページが20ほどある。
この作品はもともと「眠り」というタイトルで1989年に文芸誌に発表されたもので、その翻訳が海外で出版される際に、これらの挿絵が使われたと村上春樹があとがきに書いている。それから20年近くが経って、海外で使われた挿絵を伴い、かつ全文改稿して2010年に単行本として出版されたのだそうだ。
あらすじ:(自分で簡単にまとめたもの)
主人公は30歳の主婦、歯科医の夫、子供が一人。裕福とまでは行かないがそこそこの生活をしているが、ある日、恐ろしい夢をみて以来、まったく眠れなくなってしまう。その時以来、自分が好きだった読書にはまっていく。眠れないままで、昼間は普段どおりの生活をし、夜には自分がかつてやっていた読書をしながらお酒を飲んだり、甘いものを食べたり、車で深夜の街のドライブをしたり自分の時間が広がったと感じていた。
そんな中、少しずつ何かが違和感を覚えるようになってきて、彼女の夫や子供のことからはどんどんと乖離していく。そんな彼女の考え方もどんどんと悪い方へ向かっていく。眠れないと死んでしまうのか?死ぬってどういうこと?などを考えながらもなぜか自分がどんどんと若くなってるとも感じる。
そんな違和感の中、彼女は深夜のドライブに出かけた先で事件に巻き込まれてしまい、何かが間違っていると思いながら恐怖で動けなくなる。
というところで話は終わっている。
お気に入りの言葉とかはちょっとむずかしいので率直な感想を書く。
はっきり言って、とても後味の悪い作品だった。同時に読み手にそう思わせるだけの作者の「力」も改めて感じた。
読んでいる間、この主人公の行動を自分なりの知識と照らし合わせていた。これは実に病理的な作品だ。村上春樹がこういう作品を書くのはもしかしたら、自分の中にある闇的なものを文章としてうまく処理できる人だからなのだろう。それらの闇を心の奥底で飼いならして作品にしてるのだろうとも思うのだ。
もともとの「眠り」が書かれたのは「ノルウエィの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」の直後で心が堅まって冷たくなっていた時期だとも書かれていたので、この短編はその時の村上春樹の心の中の病理で間違い無いだろう。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドなどはわかりやすいし、短編もわかりやすい作品がいくつもあるが、この「ねむり」はそういう柔らかさに欠けてる。
随分と以前「ねじ巻きクロニクル」の第一巻を読んで気分が悪くなったときのことをかすかに思い出してしまった。この作品も狂気を描いたと村上春樹がどこかで書いていたような記憶があるが、この「ねむり」もそういう後味の悪さ。あとがきの通り心が堅まって冷たいのがそのまま出てきたような作風だった。だった。
他の人に奨めたいとは思わないが、とりあえず読了したので感想を書いておこう。
まあそんなこんなで今年2冊めの読書感想でした。
では良い一日を。
「夜は短し 歩けよ乙女」 森見登美彦 角川文庫
あらすじにかえて(文庫本の裏表紙の紹介文の写し):
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の思いに気づかない彼女は頻発する”偶然の出会い”にも「奇遇ですねえ!」というばかり。そんな2人を麻痺受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し本屋大賞2位にも選ばれたキュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作! 解説 羽海野チカ
さて物語の舞台は京都市内。なので見覚え聞き覚えがある地名が次々と出てきて、先輩の語りと黒髪の乙女の語りが交互に物語をすすめていく。
主人公はもちろん黒髪の乙女。先輩は副主人公といえば良いのかな?それとももうひとりの主人公?
他の登場人物でキーになるのは李白翁と呼ばれる老人。この老人が第一章で「黒髪の乙女」言ったのが「夜は短し歩けよ乙女」という言葉で、第四章ではこれを乙女が自分に言うというのも面白い展開。
ただ話の展開がかなり早く、あるいは唐突で、なかなか取り付きにくく、読み終えるのに随分と時間がかかってしまった。が、一旦それがわかればどんどん読み進められると思う。
作品の中で気に入った場面(セリフ):
第2章は古本市で「黒髪の乙女」が子供の頃に好きだった絵本を探す話なのだが、そこでこんな事を考える乙女。
「我々は無意識のうちに本との出会いを選んでいるものでしょうし、あるいは我々が偶然と思っていても、それは単に錯綜する因果の糸がみえないに過ぎないのかもしれません。そう頭がわかっていても、本を巡る偶然に出くわした時、私は何か運命のようなものを感じてしまうのです。」
言ってる事がすっごくわかるような気がして、これで一気に先へ進めるた感じがあるかもしれない(笑)。
私自身も子供の頃に好きだった絵本を大人になってから探していた頃があったのでそういう意味でもこの第二章のこのシーンは気に入りました。私の場合は残念ながら見つけられなかったのですが。
物語が早い、突然な展開だけではなく、登場人物もかなり奇妙な人ばかり。というよりも登場人物が本当に人間なのか?もしかしたら神様やら妖怪の類が紛れているのではと思わせる世界観。
特に第4章は夢と現実がごちゃまぜになっての展開なので全く分からない人がいても不思議じゃないかもなあ。そういったごった煮のような世界が描かれたお話でした。
でもこの曖昧な感覚が後々の作品にも引き継がれてるんだなと「夜行」の事を思い出してしまったのでした。
読書感想はここまでです。
実際はこれをノートに書いてますが、一度サンプルとしてここに書き込んで見ました。久しぶりにここの本ジャンルで書くのもいいかな~、うん^^。
あらすじにかえて(文庫本の裏表紙の紹介文の写し):
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の思いに気づかない彼女は頻発する”偶然の出会い”にも「奇遇ですねえ!」というばかり。そんな2人を麻痺受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し本屋大賞2位にも選ばれたキュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作! 解説 羽海野チカ
さて物語の舞台は京都市内。なので見覚え聞き覚えがある地名が次々と出てきて、先輩の語りと黒髪の乙女の語りが交互に物語をすすめていく。
主人公はもちろん黒髪の乙女。先輩は副主人公といえば良いのかな?それとももうひとりの主人公?
他の登場人物でキーになるのは李白翁と呼ばれる老人。この老人が第一章で「黒髪の乙女」言ったのが「夜は短し歩けよ乙女」という言葉で、第四章ではこれを乙女が自分に言うというのも面白い展開。
ただ話の展開がかなり早く、あるいは唐突で、なかなか取り付きにくく、読み終えるのに随分と時間がかかってしまった。が、一旦それがわかればどんどん読み進められると思う。
作品の中で気に入った場面(セリフ):
第2章は古本市で「黒髪の乙女」が子供の頃に好きだった絵本を探す話なのだが、そこでこんな事を考える乙女。
「我々は無意識のうちに本との出会いを選んでいるものでしょうし、あるいは我々が偶然と思っていても、それは単に錯綜する因果の糸がみえないに過ぎないのかもしれません。そう頭がわかっていても、本を巡る偶然に出くわした時、私は何か運命のようなものを感じてしまうのです。」
言ってる事がすっごくわかるような気がして、これで一気に先へ進めるた感じがあるかもしれない(笑)。
私自身も子供の頃に好きだった絵本を大人になってから探していた頃があったのでそういう意味でもこの第二章のこのシーンは気に入りました。私の場合は残念ながら見つけられなかったのですが。
物語が早い、突然な展開だけではなく、登場人物もかなり奇妙な人ばかり。というよりも登場人物が本当に人間なのか?もしかしたら神様やら妖怪の類が紛れているのではと思わせる世界観。
特に第4章は夢と現実がごちゃまぜになっての展開なので全く分からない人がいても不思議じゃないかもなあ。そういったごった煮のような世界が描かれたお話でした。
でもこの曖昧な感覚が後々の作品にも引き継がれてるんだなと「夜行」の事を思い出してしまったのでした。
読書感想はここまでです。
実際はこれをノートに書いてますが、一度サンプルとしてここに書き込んで見ました。久しぶりにここの本ジャンルで書くのもいいかな~、うん^^。