ちりぬるをわか
日々のちょっとした事。で、いろんなことがあったりなかったり。

「とっておき名短篇」 北村薫・宮部みゆき編 ちくま文庫 2011年発行
この名短篇はシリーズで何冊か出版されてる、そのうちの一冊です。
内容紹介:文庫ぼの裏表紙から
「しかし、よく書いたよね、こんなものを・・・」と北村薫に言わしめた、とっておきの名短篇!
種村弘「愛の暴走族」、川上弘美「運命の恋人」、戸板康二「酒井妙子のリボン」、深沢七郎「絢爛の椅子」、松本清張「電筆」、大岡昇平「サッコヴァンゼッティ」、北杜夫「「異形」など、目利き二人を唸らせた短篇の勢揃い。解説対談 北村薫・宮部みゆき
この短篇集は三部構成になっていて、第一部のテーマが「愛」、第二部が特集で飯田茂美の「一文物語集」より 0〜108の散文集、第三部がミステリーなど。
図書館で手に取ってパラパラとみている時に目に止まったのがこの第二部の「一文物語集」の文章で、これをじっくり読んでみたくて本を借りた、といっても良いくらいです。
他のものはホラー的なものがあったり、ファンタジー?空想小説的なものや、ミステリーなども含め色々な作品がありましたが、どちらかというと読んで楽しいという作品よりも、なんだこれはと言いたくなるようなものが多いのかな。
それぞれの作品に対して書いてると長くなるので割愛。でもどれもこれも印象的な作品ではありました。
どう印象的なのか。
作品の解説対談の中で、北村薫が「心地よくないんですよ。心地よくないけれども、小説と言うのは決して、心地よくなるために読むだけのものではない。」と言っています。
これは「一文物語集」の一つを取り上げて言ってるのですが、この名短篇通して言えることでもあるのだろうと思ったのものです。
確かにそう言う小説もあります。少し前に読んだ村上春樹の「ねむり」がそうなのかと思います。もちろんそれらの小説もすごいと思います。ただ個人的には読んでいるとホッとするような心地よさというか心穏やかになるような作品がいいかな。それとももう歳かな(笑)。
と言うことでざっくりと読み終えての記録でした。
このあと図書館に本を返却に行ってきます。
良い1日になりますように。
この名短篇はシリーズで何冊か出版されてる、そのうちの一冊です。
内容紹介:文庫ぼの裏表紙から
「しかし、よく書いたよね、こんなものを・・・」と北村薫に言わしめた、とっておきの名短篇!
種村弘「愛の暴走族」、川上弘美「運命の恋人」、戸板康二「酒井妙子のリボン」、深沢七郎「絢爛の椅子」、松本清張「電筆」、大岡昇平「サッコヴァンゼッティ」、北杜夫「「異形」など、目利き二人を唸らせた短篇の勢揃い。解説対談 北村薫・宮部みゆき
この短篇集は三部構成になっていて、第一部のテーマが「愛」、第二部が特集で飯田茂美の「一文物語集」より 0〜108の散文集、第三部がミステリーなど。
図書館で手に取ってパラパラとみている時に目に止まったのがこの第二部の「一文物語集」の文章で、これをじっくり読んでみたくて本を借りた、といっても良いくらいです。
他のものはホラー的なものがあったり、ファンタジー?空想小説的なものや、ミステリーなども含め色々な作品がありましたが、どちらかというと読んで楽しいという作品よりも、なんだこれはと言いたくなるようなものが多いのかな。
それぞれの作品に対して書いてると長くなるので割愛。でもどれもこれも印象的な作品ではありました。
どう印象的なのか。
作品の解説対談の中で、北村薫が「心地よくないんですよ。心地よくないけれども、小説と言うのは決して、心地よくなるために読むだけのものではない。」と言っています。
これは「一文物語集」の一つを取り上げて言ってるのですが、この名短篇通して言えることでもあるのだろうと思ったのものです。
確かにそう言う小説もあります。少し前に読んだ村上春樹の「ねむり」がそうなのかと思います。もちろんそれらの小説もすごいと思います。ただ個人的には読んでいるとホッとするような心地よさというか心穏やかになるような作品がいいかな。それとももう歳かな(笑)。
と言うことでざっくりと読み終えての記録でした。
このあと図書館に本を返却に行ってきます。
良い1日になりますように。
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図書館で借りてきた本。元々は同じ作者の「月まで3キロ」を借りたかったのだが貸出中だったのでかわりに手にとった短編集。
それではいつもの形式で書いてみましょ。
「八月の銀の雪」 伊予原 新(いよはら しん) 新潮社 2020年発行
内容紹介:コンビニのベトナム人店員が就活連敗中の理系大学生に見せた驚きの姿。シングルマザーが聞いた深海の話。原発下請け会社を辞めて一人旅をする男。科学の揺るぎない真実が人知れず傷ついた心を救う5篇の物語。(以上は図書館の紹介文より)
ということで本書には 八月の銀の雪 海へ還る日 アルノーと檸檬 玻璃(はり)を拾う 十万年の西風 の5篇で構成されている。紹介文にあるように、それぞれの話が進んでいく中で、科学的な情報が大事な鍵になっていて、それと登場人物達がどのようにつながるのかという展開になる。しかし科学的な話というよりは、登場人物達がそれに気づくことで前に向けるような展開になってる。
2020年に書き下ろされた短編集でもあり、話の中に出てくることは現代に見られることばかりだ。例えばコンビニ店員が外国人だったり、アフィリエイトのことが出て来たり、プログラミングだったり(八月の銀の雪)。シングルマザー(海へ還る日)だったり福島の原発事故の話(十万年の西風)だったり。
特に表題の「八月の銀の雪」は面白いと思った。他も良い作品なんだけど、そもそも八月にどんな銀の雪が降るのか、それはなんなのか?というのが面白い発想なのだ。ネタバレはやめておくが、ここでの科学的なものは地球の中がどうなってるのか、というのがヒントになるのかな。
お気に入りの言葉:これも八月の銀の雪から。長くなるけど残しておきたい。
「人間の中身も、層構造のようなものだ。地球と同じように。
硬い層があるかと思えば、その内側に脆い層。冷たい層を掘った後に、熱く煮えた層。そんな風に幾重にも重なっているのだろう。真ん中の芯がどういうものかは、案外と本人も知らないのかも知れない。
だから表面だけ見ていても、他人には決してわからない。その人間にどんなことがあったのか。奥深くにどんなものを抱えているのか。
それを知る方法はあるのだろうか。(中略:耳を澄ませて聞けば良いのかと思う主人公)」
「僕も耳を澄ませよう。うまくしゃべれなくても耳だけは澄ませていよう。その人の奥深いところで、何かが静かに降り積もる音が、聞き取れるぐらいに。」
感想雑感:筆者のプロフィールがちょっと変わっていて、神戸大学理学部卒でその後、東大の大学院で地球惑星学科専攻、博士課程終了なのだそうです。そのあたりも取り上げられてる科学的な知識や、主人公の理学部大学生の姿などにも出てきてるのかな。
「アルノーと檸檬」はちょっと馴染みがない伝書鳩の話なのだけど、そこにアパートの建て替えの話なんかが絡んでいるのが現代的だなあと思う。
それと「八月の銀の雪」にちょっと出てくる地震学の話は最後の「十万年の西風」と、地震でつながるのかなと思えた。
この本が面白かったのでこの作者の作品はもう少し読んでみようかと思う。そして初めに借りるつもりだった現在も貸出中の「月まで3キロ」は図書館に貸出予約をしました。
「月まで3キロ」は新田次郎文学賞をとったものなのでそれだけでも読んでみたいと思ってたが、「八月の銀の雪」を読んでさらに期待できそう。
来月くらいには読めるかな。
それではいつもの形式で書いてみましょ。
「八月の銀の雪」 伊予原 新(いよはら しん) 新潮社 2020年発行
内容紹介:コンビニのベトナム人店員が就活連敗中の理系大学生に見せた驚きの姿。シングルマザーが聞いた深海の話。原発下請け会社を辞めて一人旅をする男。科学の揺るぎない真実が人知れず傷ついた心を救う5篇の物語。(以上は図書館の紹介文より)
ということで本書には 八月の銀の雪 海へ還る日 アルノーと檸檬 玻璃(はり)を拾う 十万年の西風 の5篇で構成されている。紹介文にあるように、それぞれの話が進んでいく中で、科学的な情報が大事な鍵になっていて、それと登場人物達がどのようにつながるのかという展開になる。しかし科学的な話というよりは、登場人物達がそれに気づくことで前に向けるような展開になってる。
2020年に書き下ろされた短編集でもあり、話の中に出てくることは現代に見られることばかりだ。例えばコンビニ店員が外国人だったり、アフィリエイトのことが出て来たり、プログラミングだったり(八月の銀の雪)。シングルマザー(海へ還る日)だったり福島の原発事故の話(十万年の西風)だったり。
特に表題の「八月の銀の雪」は面白いと思った。他も良い作品なんだけど、そもそも八月にどんな銀の雪が降るのか、それはなんなのか?というのが面白い発想なのだ。ネタバレはやめておくが、ここでの科学的なものは地球の中がどうなってるのか、というのがヒントになるのかな。
お気に入りの言葉:これも八月の銀の雪から。長くなるけど残しておきたい。
「人間の中身も、層構造のようなものだ。地球と同じように。
硬い層があるかと思えば、その内側に脆い層。冷たい層を掘った後に、熱く煮えた層。そんな風に幾重にも重なっているのだろう。真ん中の芯がどういうものかは、案外と本人も知らないのかも知れない。
だから表面だけ見ていても、他人には決してわからない。その人間にどんなことがあったのか。奥深くにどんなものを抱えているのか。
それを知る方法はあるのだろうか。(中略:耳を澄ませて聞けば良いのかと思う主人公)」
「僕も耳を澄ませよう。うまくしゃべれなくても耳だけは澄ませていよう。その人の奥深いところで、何かが静かに降り積もる音が、聞き取れるぐらいに。」
感想雑感:筆者のプロフィールがちょっと変わっていて、神戸大学理学部卒でその後、東大の大学院で地球惑星学科専攻、博士課程終了なのだそうです。そのあたりも取り上げられてる科学的な知識や、主人公の理学部大学生の姿などにも出てきてるのかな。
「アルノーと檸檬」はちょっと馴染みがない伝書鳩の話なのだけど、そこにアパートの建て替えの話なんかが絡んでいるのが現代的だなあと思う。
それと「八月の銀の雪」にちょっと出てくる地震学の話は最後の「十万年の西風」と、地震でつながるのかなと思えた。
この本が面白かったのでこの作者の作品はもう少し読んでみようかと思う。そして初めに借りるつもりだった現在も貸出中の「月まで3キロ」は図書館に貸出予約をしました。
「月まで3キロ」は新田次郎文学賞をとったものなのでそれだけでも読んでみたいと思ってたが、「八月の銀の雪」を読んでさらに期待できそう。
来月くらいには読めるかな。


「いちばん初めにあった海」 加納朋子著 角川書店 1996年出版
あらすじにかえて(カバー裏紹介文の写し):
ワンルームマンションで一人暮らしをしていた堀井著夏は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。だが、千波はこの人物に全く心あたりがない。しかも開封すると、そこには”あなたのことが好きです”とか”私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、<YUKI>とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まったー。
心に深い傷を追ったふたりの女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、胸いっぱいにひろがるぬくもりあふれたミステリー。
加納朋子の本を読むのはこれが2冊目。一冊目はデビュー作の「ななつのこ」で、たしか15年位前に読みました。「ななつのこ」も手紙のやり取りで謎が溶けていくという面白い日常ミステリでかなり気に入ってたのに加納朋子の次の本を手にすることが無いままきでした。日常ミステリーってけっこう好きなのですが、その一番初めに読んだのが「ななつのこ」。
今回読んだ「いちばん初めにあった海」も日常の中での出来事が描かれ、何故主人公の千波はこんなことになってるのだろうと読みながら考え、そして話が進むと少しずついろいろな謎が明らかになってくるスタイルの作品。
そもそもこの主人公がどういう人物でどうして一人暮らしをしているのかがわからないまま、住んでいるアパートの騒音に耐えられず引っ越しをしようと考えるところから始まりますのでそこからすでに謎です。
そういった主人公の現在のあとに、思い出や記憶が少しずつ描かれていくのは、まるで2本の点線を交互につないで行くような感じで、その中から読み手はこうじゃないのかって思う謎を読み解いどんどん積み重ねていく面白さがあります。
でも最後は思わぬ展開に、えっ?っと驚かされるという面白い作品でした。
他には、これが出版されたのが1996年で話の中に出てくるいろんな場面がその当時の描写だったりするのがどことなく懐かしさも感じられました。
ミステリーなのであまり書くとネタバレになるので中身はこの程度にしておきましょう。
作中の気に入った一節:「もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただの一つしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほどに確かに。
海はひとたび失われた楽園に、たぶん一番よく似ている。」
これは作中に出てくる本「いちばん初めにあった海」にかかれている文です。この本は初めはなぜここにあるのかわからないところから、最後の最後まで小説を通しての軸の一つになってる大事な鍵です。
ちなみにこの本はもう一作、「化石の樹」という短編が収録されています。こちらは主人公の男性の一人称の語りの中から謎が見えてくるというもので、過去に起こった事件に対してこういうことがあったのじゃないかと推理していくお話です。
といういことで、なんとか図書返却日前に読書ノートが書けてよかった^^;。
あらすじにかえて(カバー裏紹介文の写し):
ワンルームマンションで一人暮らしをしていた堀井著夏は、周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。だが、千波はこの人物に全く心あたりがない。しかも開封すると、そこには”あなたのことが好きです”とか”私も人を殺したことがある”という謎めいた内容が書かれていた。一体、<YUKI>とは誰なのか?何故、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を巡る旅が始まったー。
心に深い傷を追ったふたりの女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、胸いっぱいにひろがるぬくもりあふれたミステリー。
加納朋子の本を読むのはこれが2冊目。一冊目はデビュー作の「ななつのこ」で、たしか15年位前に読みました。「ななつのこ」も手紙のやり取りで謎が溶けていくという面白い日常ミステリでかなり気に入ってたのに加納朋子の次の本を手にすることが無いままきでした。日常ミステリーってけっこう好きなのですが、その一番初めに読んだのが「ななつのこ」。
今回読んだ「いちばん初めにあった海」も日常の中での出来事が描かれ、何故主人公の千波はこんなことになってるのだろうと読みながら考え、そして話が進むと少しずついろいろな謎が明らかになってくるスタイルの作品。
そもそもこの主人公がどういう人物でどうして一人暮らしをしているのかがわからないまま、住んでいるアパートの騒音に耐えられず引っ越しをしようと考えるところから始まりますのでそこからすでに謎です。
そういった主人公の現在のあとに、思い出や記憶が少しずつ描かれていくのは、まるで2本の点線を交互につないで行くような感じで、その中から読み手はこうじゃないのかって思う謎を読み解いどんどん積み重ねていく面白さがあります。
でも最後は思わぬ展開に、えっ?っと驚かされるという面白い作品でした。
他には、これが出版されたのが1996年で話の中に出てくるいろんな場面がその当時の描写だったりするのがどことなく懐かしさも感じられました。
ミステリーなのであまり書くとネタバレになるので中身はこの程度にしておきましょう。
作中の気に入った一節:「もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただの一つしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほどに確かに。
海はひとたび失われた楽園に、たぶん一番よく似ている。」
これは作中に出てくる本「いちばん初めにあった海」にかかれている文です。この本は初めはなぜここにあるのかわからないところから、最後の最後まで小説を通しての軸の一つになってる大事な鍵です。
ちなみにこの本はもう一作、「化石の樹」という短編が収録されています。こちらは主人公の男性の一人称の語りの中から謎が見えてくるというもので、過去に起こった事件に対してこういうことがあったのじゃないかと推理していくお話です。
といういことで、なんとか図書返却日前に読書ノートが書けてよかった^^;。
