「梅雨物語」貴志祐介 角川書店 2023/7/14 発行
角川文庫紹介より:
謎を解くたびに、絶望は深まる。貴志祐介が描くホラーミステリの極北 。
自ら命を絶った青年が残したという1冊の句集。元教師の俳人・作田慮男は、かつての教え子から依頼を受け、俳句の解釈を進める。沖縄の情景を描いた句を読み解いていくうち、恐るべき秘密が浮かび上がってくる(「皐月闇」)。遊廓で蝶のような花魁たちと遊ぶ夢を見る男の末路、広い庭を埋め尽くす色とりどりのキノコがもたらす幻覚。静かに忍び寄る恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する3編を収録。著者真骨頂のホラーミステリ。
感想:ホラーというよりもサスペンス的な感じもある中編集といったところ。タイトルを見て上田秋成の「雨月物語」を連想したので借りてみた。
中身は相変わらず情報量の多い文章でこれでもかというくらいいろいろと出てくる。
一作目は俳句に隠された心の動きから作者の行動を推理していくという内容。
細かい情景にちりばめられた伏線が最後にきれいに回収されるのは見事だと思った。
ただ、ここで元教師は認知症でうまく思い出せない場面が度々出てくる。
その描き方が今一つリアリティがないというか、どこまでが想像なんだろうという違和感がある。
それと句の解釈でユング心理学がでてきたが、これも物語に合わせて曲げてるような感じがどうにもすっきりしない。
二作目の「ぼくとう奇譚」はホラーというか奇譚ってこんなのだよなあと思わせてくれる。
これは主人公が呪いの世界に引き込まれて命を落とす内容。
時代設定が大正時代が終わって、昭和になってしばらくという時期。
その雰囲気がいかにも奇譚というのにマッチしてるなと思った。
この物語は最後にそれまでの展開のネタが明かされる。
そこまで行って始めてあの人物はそういうことで出てきたのかと分かるという、アハ体験的な面白さもあった。
この3作のなかでは一番ストレートに読めたかな?
三作目「くさびら」は実際にないキノコが見える主人公の話で、キノコにまつわる過多な情報が出てくるのがいかにも貴志祐介だなと思わせてくれた。
前二つでは主人公何かの犯人という展開になっていたのでこれも同じかな~、
と読んでいったら最後にどんでん返しがあってびっくり。
ここでもユング心理学が出てくる。
登場人物の一人が精神科医でユング心理学を学びに留学もしたと出てくるんだけど、
この精神科医が言ってることがなんとも付け焼刃な気がしてがっかり。
いろんな情報や知識を物語の構成要素としてこれでもかと入れ込んでくるのがこの人のスタイルだろう。
それは「新世界より」でもいやというほど感じた。
でも、この作品のように、どこかしらに違和感のある情報が見えると他の事も疑問に思える。
そして、「ああ、この人は物語をうまく作ろうと一生懸命に調べたんだろうなあ。
でも実地的な事で学んだことではなくて、文献などで得た情報を並べてるだけなんだ」と思えてしまうのでした。
まあ、書かれた多くの情報はおおむね正しいと思う。
キノコの種類とか馬鹿みたいに出てくるし(笑)。
でも俳句の話で句を読み取っていくというのが違和感あり。
語彙に長けた人が作ったならもかく、素人が作った句を見て何をその底に描きたかったかなんて、
作者にしかわからないことじゃないのかなって思うんだけどねえ。
違うかな??
それらをすべて色合いとしてさらっと読んだら、
すごく細かい知識的な事も書かれていて面白いんだろうけど、
自分にはあまり合ってないのかもしれないと改めて感じた。
せっかく同じ市の住民なんだけど、この人の本はこれでお終いにしようかな。
以上
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