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ちりぬるをわか

日々のちょっとした事。で、いろんなことがあったりなかったり。

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「新世界より」上下巻 貴志祐介  2008年 講談社

内容紹介:1000年後の日本で、注連縄に囲まれた神栖六十六町に住んでいる子供達の物語。町では人々が呪力という超常的な力を持ち、ハダカネズミという種を使役して暮らしている。
12歳の渡辺早季とその仲間が町の外でミノシロモドキという不思議な生き物と出会い、そこからハダカネズミと戦いに巻き込まれて行く中で、1000年の間に何が起こったのかが徐々にわかっていくという展開。

物語は早季が12歳から始まって26歳で終わる。その間に6つの章があり、後半(下巻)の3章は26歳時点になる。その出来事を早季が後日にまとめたものというのがこの本の構成になっている。

ジャンルで言えばSFになるそうだ。極めて日本的なSFで、日本の文化や歴史の名残が物語のあちらこちらに散りばめられている。仏教というか密教的な真言だったり、注連縄は神道的な名残だったり、歴史的には昔の人物の話が出てきたり。

個人的な感想:さくさく読み進められると思うが、ところどころに出てくる文章がとても気になってしまった。後日にまとめた文章だからなのか、随所で「その時は大変なことになるとは思わなかったのだ」と言った記述が出てくる。それがくどいなあと思ってしまった。
加えて、下巻に出てくる生き物の名前の羅列や描写が細かすぎるのはどうなんだろう。これも少し辟易した。

早季は、過去の人間がどんなに酷かったのだろうと、色々なところで考えてしまう。戦争や人を殺すための武器や、言葉遣いまでにすらそれを感じてしまうのだ。例えば「赤子の手を捻る」ってそんなことを口にするなんて考えられない」といったもの。
それも結構頻繁に出てくるんだが、これって、作者が今の人間や社会をこうみているのだと言いたいだろうかと思ってしまった。

 ただ最後の最後に「けっして信じたくはないが、新しい秩序とは夥しい流血によって塗り固めなければ誕生しないものなのかもしれない」と早季は思い直す。
それは何があってもハダカネズミとの戦いの後にさらに新たな世界を築こうという意志のようだと思えた。加えてそれまで早季が感じていた酷いことをしてきた人間に対しての新たな視点だろう。

早季が「新世界より」の歌を聴きながら涙するのは、そこにあるどうしようもない悲しみを感じているんだろうなとも思えたのでした。

この「けっして信じたくはないが」の一文がなかったらこの世界はこの先どんどんと削られ消えてしまうのだろうと下巻は少し鬱々と読んでいたのだが、投げ出さず読み終えて良かったというのが読み終えた瞬間の感想でした。
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