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ちりぬるをわか

日々のちょっとした事。で、いろんなことがあったりなかったり。

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「弱法師」 中山 可穂 文藝春秋 2004年

帯の紹介文:
○脳に材を得て、異形の愛のあり方を問う作品集。
難病を抱える少年と、少年に父親を超えた愛情を抱く義父との交流を描く表題作など、激しくも狂おしい愛の形を描く中編三篇を収録

感想:
能楽の作品を題材にした中編小説「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」の三篇。
それぞれの作品に登場する人物が、能の主要人物を模しているような設定で、三篇とも主要人物は亡くなってしまう。なのでそこに至る物語でもあるとも言え、決して楽しく読めるという作風ではない。

作品の構成としては能楽に準えていて、主役(シテ)と物語の導き役(ワキ)が違うので、読み手としても舞台を見ているような感じになる。

「弱法師」は絶望に至りそこで断ち切られてしまうという悲劇的な話。
「卒塔婆小町」は狂気的な思い焦がれとそれに対し最後にやっと満足を得たような終わり方。
「浮舟」は迷いながらも生きていくことで繋ぎ止める人との繋がり、といった感じだろうか。

元となった能楽では弱法師は追い出された子供が親に巡り合って家に戻る物語。卒塔婆小町は小町伝説を下敷きにした深草少将の呪いが解かれて小町は成仏。浮舟は源氏物語宇治十帖の浮舟で薫と匂宮の間で揺れ動いていた浮舟の霊が僧侶によって弔ってもらい消えていく。
というように、どれも出だしは非話なのだけど最後に救いがある。これはあるいは能楽が作られた時代の流行の佛教説話、あるいは室町という混乱の時代からの救いが関係してるからかもしれない。

そしてその救いはここではあるのだろうかと考えてしまった。

「弱法師」だけはどうしても悲劇で断ち切られてる感が否めないが、「卒塔婆小町」では聞き手の青年が少し前向きに歩き出し、「浮舟」では残された娘がどんなことがあっても生きろと言われているように感じる、それが救いなのかもしれないね。
三作の中では「浮舟」が読んでいてストレスがなかったとも思った。

以上、久しぶりの読書ノートでした。
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