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ちりぬるをわか

日々のちょっとした事。で、いろんなことがあったりなかったり。

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クリスティはいったん置いといて、八月の六日間を読んだ。

 北村薫の文体は柔らかくて読みやすい。かなり女性的だなと思う。ずっと前に初めて読んだ時は、この人は女性かなと思ってしまったほどだ(笑)。
 一般的な感想でいえば、面白いお話だった。山歩きのいいところやそうでないところ、楽しさや辛さなども書かれていて、山へ何かを探しに行くとか、忘れ物を取りに行くとか、そういうのはわかる気がする。
あれこれと共感できるところもあるし、冒頭の方で出てきた加藤文太郎の「単独行」などもポイントが高い。
自分で登らなくてもそこに山があるだけで良しとする感覚、そこへ行く誰かにバトンを渡すとか、そういうのも同感できる。
 たしかにこれを読んで山へ行ってみたいなと感じる人がいても不思議じゃない。

 でも途中で幾つか違和感が出てくる。あとがきまで読んでみて判ったのだが、この人は山を歩かずにこのお話を書いたのだそうだ。山歩きをする人に話を聞いたり、山のDVDを見たり。かなり調べて書いたのだろうけど、実際に自分で歩いていないので、細かい所で違和感が出てきてたんだなあ。
 一番の違和感は、主人公の山行きがあまりにも行き当たりばったり過ぎること。ここに書かれているような何日もかけて歩く山なら、どこへ行くって決めるのは当然だけど、綿密なとは言わなくても登山計画があってしかるべきで、それを書面にして提出するなんていうシーンが一切ない。
 そして途中で違う場所へ向かってみようとしたり、持っているのに地図やコンパスを使わずに他の登山者にどうでしょうかと聞いたり、なんてとても三年も山歩きをした人がやることとは思えない、という違和感。
 もしかしてこういうのが今の山歩きの主流なのか?そしてこの主人公は、こんな山歩きをしていたらいつか遭難するだろうなって思ったのも確か。^^;

 一人で歩く楽しみ、気持ち、山の景色、空気の素晴らしさなどは書かれているけど、一人で山を歩く為の本当に基本的なことが描かれていないと思った。基本的なといってもマニュアルがあるわけではなく個人の感想的なところが大きいのだが、それでも歩く際の体重移動の方法や足の運び方歩きのリズムなどは共通するお約束じゃないかなと思う。

 まあ、そういう諸々の違和感があったのは、はじめの方に山のあれこれが出てきたので、つい山歩きのお話だと思ってしまったこちらの問題なんだろう。

 この本は山歩きのお話ではなくて、山歩き「も」する女性がどう自分と向き合っていくかが主題で、そういう意味ではとても面白いお話だった。もう一度おさらいがてら読みなおしておこうと思っている。^^
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